妄想と記憶

人生にくじける孤独な妄想と記憶

首がかゆくてイライラしていた。無駄な一日をただただ過ごしただけ。職場から書類が送られてくるがすごく鬱陶しく思えてきた。トラウマがよみがえるしとても嫌な気分になる。どうやらおれの代わりの人が来たみたいだしいよいよ用無しってわけか。自分が必要とされていない役立たずのどうしようもない人間のような気がして死にたくなる。劣等感。無力感。みんなおれのせい。まあ逆に必要とされても困るんだが。あんな暗黒地獄にはもう関わりたくないんだ。生きるために仕方なくやるべきとされていることをやっているだけ。本当は悪い夢だったんだと忘れてしまいたい。早く新しい道に向けて手応えを得て自信をつけたい。こんなんでいちいち気持ちをかき乱されていては駄目だ。しかしかゆみは気力を容赦なく奪っていく。泣きたい気持ち。何もかもぶっ壊してやりたい。


おでこからこめかみにかけてとまぶたと眉毛のあたりをごみ箱の上で軽く掻いた。粉がボロボロ落ちていった。そのあと水で少し洗ったらヒリヒリと染みた。かゆみが痛みに変わった。もう嫌だよこんな毎日。いい加減限界に来た。この怒りを何処にぶつければいい。自分自身にぶつけるしかない。自暴自棄になって掻きまくって血まみれになって泣けばいい。そんなことをしても痛くなるだけでまたかゆくなるのはわかっている。さすがに何もやる気力をすべてなくした。これで寝ているあいだもかゆくて身悶えしながら何とか耐えようとして結局朝起きれば掻き壊した残骸が虚しく撒き散らされている。何という生き地獄。もういっそ気が狂ってしまえばいいのに。何もかも嫌になるのも人間として当然だ。早く死ねばいいのに。これだけ苦しめたのだからせめて安らかに眠らせてくれよな。すべてに疲れた。さようなら。


アトピーのことと職場のことを先生に話しても何の解決にもならないし気持ちだって楽にはならない。だからこれは愚痴だ。僕は先生には愚痴を話すつもりはまったくない。愚痴は自分の中で消化するものだ。先生とはもっと違う話をしたい。癒されるような楽しいお話とか僕らにしかわからないような心理学的な人間関係のお話とか。素人が考えもつかないようなことについて議論したり。先生から大事なことを依頼されて信頼関係の強さを感じたり。先生のお話を聴いて本気で心配して自分のことのようにあれこれ思案したり。先生とお話することで何かが生まれる。先生と話しているときの空気感が好き。先生と一緒にいるだけで癒される。世界にひとりしかいない天然で正直で真っすぐな心のきれいな精神科医。やっぱり僕は先生を信じたい。心の支えにして生きていきたい。