妄想と記憶

人生にくじける孤独な妄想と記憶

面倒だから端折るよ。先生のように。行くのさえ面倒なんだ。話すのも。もう疲れたんだ。


通院日なので街に出てきました。イオンに寄ってから、いつものカフェに来てます。知らない女のひとから声をかけられました。僕に聞けば答えてくれそうに見えるのだろうか。こんなに憂鬱な顔をしているはずなのに。お店の入り口を教えたけれど、あまり感謝の言葉も聞かれず…僕の憂鬱な顔に気付いたのかな。まあいい。僕は優しすぎるから。役に立てたならそれでいいよ。


カフェラテだけのひとりランチ。朝もろくに食べてない。食欲がないんだ。ピンクのレキソタンを一錠余分に、デパスも飲んだ。先生のせいだよ。前置きは端折る。いきなり本題に入るよ。先生のせいだから。


先生から言い出した特別枠。僕を特別扱いしないと、一方的になかったことになってしまった。判断するのは先生。だけどやり方はあまりにひどすぎる。もう先生は説明して、それ以上は何もないという感じだった。それは紛れもなく医師の姿であって、今までの親近感はなくなっていた。僕はこの機会に『先生離れ』をする。でないと僕は壊れてしまう。ひとは変わる。先生も変わったのです。僕も変わらざるを得ない。
何だか僕が考えたことにも興味を示さず、ただ謝るばかりで、正直腹がたつというより悲しい。僕ひとりに構っていられない。僕は先生のたくさんの患者のひとりに過ぎない。今までは違っていた。特別扱いしていたと、先生自身が認識しているのだから。これから何を話したらいいのか分からないよ。僕のためと言って実際は先生のためでもある。結局僕は先生に振り回された。これは事実。だけど先生は謝るだけで、どうしてこうなったのかとか、考える気持ちなんてさらさらないようだ。
女というものは、そんな簡単に気持ちを割り切ることができるものなのか。僕はずっとこの気持ちを未練がましく引きずっていくのだろう。心の支えが欲しい。好きな女でもできたらいいのだが。そしたら先生なんて、ただの医者としか見えなくなるのに。僕は可哀想だ。僕の心を先生に弄ばれた。無自覚に僕の心に近寄って、ある日突然自分間違っていると気が付いて、僕の心から離れていった。僕はただ取り残された…先生に対する信頼の気持ちがまだ残っている。だから苦しくてたまらない。特別扱いなんてことは、僕にとっては何の問題もないのです。
僕はもう先生を心の支えにすることはできない。近付くことが怖い。もう二度とこんな思いはしたくない。やはり医者に期待したのが間違いだったのか。普通の患者に戻るよ。僕の問題だけを考えて生きていく。先生は自分の力で生きていけるひとだもの。僕の力は必要ない。僕は僕のことだけ考えればいい。先生は医者であり、僕は患者である。ただそれだけのこと。今までのことは夢だったんだ。ずいぶんと長い夢を見ていたんだね。さようなら。


僕だけ特別扱いはできないというより、僕に話す必要がなくなったということなんだと思う。他に話せる人ができたのか、話さなくても大丈夫になったのか。それは知らないし、別に知りたくもない。僕は先生にとって特別な患者ではなくなったんだ。悲しいけれど、やっぱりひとは変わる。僕だけが変わらない。だけどショックを受けて傷ついている暇もない。信じられるのは自分だけ。もう誰にも期待しない。


イオン→カフェ→精神科→カフェ。カフェラテとクロワッサン。お腹がすいたわけではないけど、一応少しは食べておこうと思った。精神科はもう僕の居場所じゃない。早くよくなって、さっさと先生とお別れしたい気分だ。もう先生なんてどうなろうが、僕には知ったことではない。精神科は現実ではなく妄想の世界にあったのです。現実の世界で優しいお姉さんに甘えたい。


普通の患者ってこんなに冷たい対応されてたの?今までと比べるから余計にそう感じるだけなのか。所詮仕事か。公私混同していたのは先生だよね。それに気付いたのだろう。だけど僕は当然知っていて敢えてやってると思っていた。天然もここまでくると問題だよ。これはさすがに許されない。
もう薬もらうだけにするよ。薬の必要性もなくなってきているから、もう先生とはお別れかも知れない。先生と会うことが負担ならば、精神科に行く意味がない。先生とお話しして、楽しくて癒されるから通っていたのだから。先生が僕を必要でなくなったように、僕も先生を必要でなくなるんだ。さようなら。今までありがとうございました。


信頼関係が壊れたらおしまいだ。今なら先生のことを嫌いにならずに済む。先生のことを信じたままで、楽しい思い出のままでお別れするよ。さようなら。僕は疲れた。


まあまだ診断書とか書いてもらう必要があるか。面倒だな。まったく。僕はこれからどうしたらいいのか…何を信じて生きていけばよいのだろう。僕の心の傷が癒えたら、少しはいい考えが浮かぶのかな。優しすぎる人間は損をするばかり。そんな自分を好きなのは自分だけ。やってられないな…


薬もらうだけの関係になるのか…まあそれが普通みたいだけど。やっぱり悲しいよ。悲しくてたまらない。あまりに一方的だったから。先生にとって僕は何だったの?特別な患者から普通の患者になった。僕は人間扱いされていたのか。まるで物のようだね。僕の心を操作したんだよ。まるで実験台だね。


考えてみれば、まだあれから通常の診察してないんだよな。だからどれだけ診察内容が変わるか分からない。先生の言葉から僕が想像しているに過ぎない。とはいえ楽観視はしないほうがいい気がするけど。まだ結論を出すには早いのかも知れない。今は時間が変わっただけだ。


最期の最期まで諦めない。諦めきれないよ。僕はまだ先生を信じる。優しすぎるお人好しなんです。


何もやる気しない。本当に疲れきっている。もう今回の話はしない。先生も話したくないようだし、僕ももういい加減疲れてしまった。先のことを考えたほうがいい。終わったことをいつまでも引きずっていても仕方ない。
考えるより動くことが大切。考える暇がないくらい、忙しく動き続ける。僕は変わらなければならない。先生の前では今まで通りでいるつもり。だけどもっと強くなるよ。もう誰にも何も期待しない。自分にしか期待しない。結局はひとり。自分を信じて生きていくしかないんだ。


痒い。おでこが痒すぎる。こんな精神状態でも容赦なく、お構いなしに僕を苦しめる。そんなに追い詰めて殺したいの?何だ、この人生は。心も体もボロボロになって、それでも普通に仕事して生きていかなければならないのか。もう許してよ。勘弁してください。呪われているとしか思えないよ。こんなの自分の力だけじゃ乗り越えられない。
誰か助けて下さい。誰もいないか…いるはずないよね。先生でさえもう助けてくれないのだから。他に誰が助けてくれるというのですか。限界を何度乗り越えてきたのだろう。乗り越えた時点で、それは限界ではなかったということか。それなら僕は限界を乗り越えたことなんて一度もないね。寝たいけど掻いてしまう。死にたい…