妄想と記憶

人生にくじける孤独な妄想と記憶

無理をして仕事をした。先伸ばしにしたほうが厄介だと思った。強迫観念で勝手に体が起きてしまった。寝ている間に頬を掻いて汁が出た。明後日また仕事をしなければならないことになってしまった。正直逃げたい。今日だってどれだけ無理をしたか知れない。無理をしたら休んでいいはず。だけど組織に属している以上、上司の命令には従わなければならない。しかも組織の事実上のトップなのだ。選択の自由はなかった。僕には先生がいる。先生とお揃いで無理をするよ。
せっかく早起きしたので街に出た。憂鬱な気持ちを晴らしたい気持ちも強かった。ドトールでカフェラテ。病気持ちのプライドでどうにかやるしかない。僕はやるときはやる。今までも今日も明後日も、そしてこれからも。発狂寸前。久しぶりにデパスを飲んだ。先生のことを思い浮かべて気持ちを落ち着けたい。


焦りが行動を生む。期限に追われるから動くことができる。すべての時間は限られている。死ぬまでの時間も。


いつものカフェに来ました。クロワッサンとフォカッチャとラテでひとりランチ。この組み合わせで固定されてしまった。食欲がないから仕方ない。甘いものを避けているから仕方ない。食後にピンクのレキソタンデパス。今朝の仕事のダメージと明後日の仕事のプレッシャーで気持ちは『最底』。ため息しか出ない。何か自分にごほうびをあげたい。変な外人がいる。変な日本語でペラペラおしゃべり。マシンガンのようなトークが止まらない。僕よりも余程この国に適応している。僕はこの国の人間なのに。別にこんな国に適応できなくても構わないけど。僕が適応できる国なんてあるのか。脳内で作り上げた自分だけの世界に閉じこもるしかない。他人のいない世界。


カフェを出てから服屋でシャツを物色していた。一時間くらいかけて無難な白シャツを買った。生地は薄手で七分にまくれば夏でも快適そうだ。他にもシャツをもう一枚とセール品のジャケットが気になった。また今度来たときまで考えておく。衝動買いは失敗するからね。やはり実物を見ないと駄目だな。小さいサイズもあったのでよかった。
店員さんの対応は相変わらずそっけなかったが、気に入った服さえ手に入ればそれでいい。試着の途中で後から来た大学生の団体に占拠されて、試着の中断を余儀なくされたのには悲しくなった。丁寧な店員さんならもう少し気を使ってくれるだろうに。他人には期待しない。いつものカフェの店員さんとは違うのだから。田舎は服屋の選択肢さえないから不便だ。だからついネット通販に頼って失敗する。新しい服を買って少しは気が晴れた気がする。それよりいつものカフェの店員さんと言葉を交わしたのが大きいと思うけど。クリニックは開いていた。先生はがんばっている。無理をしている。僕は先生のひたむきで健気でいじらしい姿に刺激を受ける。僕はまだ死んでない。やるときはやる。