妄想と記憶

人生にくじける孤独な妄想と記憶

もし説明されても納得なんてしなかったかも知れない。だって僕は変えたくないのだから。変える必要がないと思っているのだから。説明があったとしても、結局はこうなっていたのかも知れない。僕はきっと抵抗したに違いない。変えることも僕のため。すべては僕のためなんだ。僕の心は弱い。先生が僕のためにしてくれるのなら、僕はそれを素直に受け入れるしかない。僕は先生の患者なのだから。友達ではないのです。


僕は先生に依存していた。アルコールやドラッグのように。先生なしでは生きていけない体になっていた。先生の言っていたことが、やっと分かってきた気がします。先生は医師失格なんかじゃないよ。僕が患者失格で、人間失格なんだよ。僕がおかしかったんだ。僕が間違っていた。ごめんなさい。


先生に裏切られたとか、見捨てられたとか。逆に先生は僕のことを思っていてくれたのに。ひどいことを言ってごめんなさい。裏切られたと思うことが、先生に依存している何よりの証拠です。もう今の僕には荒療治が必要だったのかも知れない。だからよかったんだと思います。ようやく自分で気付くことができて、ほっとしています。これができなければ、僕は先生に対してずっと誤解したままだった。やっと誤解が解けた。やっぱり先生は患者のことを考えてくれる、変わった精神科医だよ。ありがとう。


大切なことを見失っていたのは、僕のほうだったんですね。僕は最低の人間です。どうしようもない人間。心が弱くて。先生に頼りきっていた。甘えていたんです。自分の力で、ひとりでも生きていけるようにならなきゃいけないのに。楽なほうにいて満足していたんです。


少し都合よく解釈し過ぎかな。すべてが僕のせいみたい。先生にも原因がある。それは曖昧になってるんだよな。面倒だな…それには触れないほうがいい。それは知ってる。でもね…気持ちは複雑。やはり僕は何でもはっきりさせないと気が済まない。病的なんだ。だから世の中をうまく渡れない。生きるのが下手。自分が嫌になる。単純な人間なら、もっと楽に生きられたのに。駄目だ。結局何もできない。


気付くまでに相当な気力を使い果たした。気付いたときは安心したけど、しばらくしたら、これからどうしていったらよいのか不安になってきた。ひとは急に変わることはできない。僕のような弱い人間は特に。疲れと不安でおかしくなりそうだ。時間が必要だね。


診察は『遊び』じゃないってことか。医師にとってはもちろん仕事だけど、患者にとっても治療という目的で、診察を受けなければならないのだろう。いつの間にか診察が遊びになっていた。おそらくお互いに。それはメリットもあるけれどデメリットもある。先生はデメリットのリスクを回避することを選んだんだ。僕は患者としてそれに従うほかない。最終的な判断は先生がするものなのだから。