妄想と記憶

人生にくじける孤独な妄想と記憶

信頼関係は自然にできる。人間関係を意図的に無理に変えようとすると、うまくいかなくなる。信頼関係なんて、作ろうと思って作れるものではない。普通の時間を重ねていけば、少しずつよいかたちになるはずだよ。僕が望むものは普通の診察。普通の患者に戻ったのだから、普通の診察を受けるだけ。先生の罪悪感や僕の心の傷は、僕らの関係がよいかたちになっていくことで和らぐだろう。


癌で死んだ人と首を吊って死んだ人。どちらも病気で死んだはずなのに。何故こんなに扱いが違うのだろう。どちらも苦しんだはず。どちらも病気と闘った。闘病と言える病気と言えない病気。自殺は病死なんだ。腐った精神医療。腐った社会。自称普通の腐った人達。すべてが腐りきっているんだ。僕も腐っている。みんな腐っている。みんないつかは死んで、この腐った世の中から消えていくんだ。


ついに発狂してしまった。家の階段を駆け上がって、廊下に倒れこんでわめき散らした。涙は出なかった。記憶が曖昧だけど『何で健康じゃないんだ!』って叫んだことは覚えている。やはり親と話しても理解されるはずもなく、結局最悪な状況になってしまった。
僕は親を泣かせても無関心な最低な人間です。一度発狂してしまえば、そのあとは意外なほど冷静になってしまう。すべての感情をなくしてしまうのです。だから親が何を言っても何も思わない。親が泣いたってまるで関心がない。心をなくした人形のようです。やはり自分の気持ちを正直に話せるのは先生しかいない。僕は先生を信じている。先生しか信じることができないんです。


復帰することを考えたのは、気持ちが不安定になったから。僕は最初から、新しい第二の人生を歩き出すつもりでいた。ようやく考えから行動に移すときに近付いていた。タイミングが悪かったんです。でもこれは僕のせい。いや、もう誰のせいでもいいんだ。そういうんじゃない。
先生が僕のために変えようと決めたんだ。これは事実だよね。僕が変化についていけなくて、被害妄想に取り憑かれて、先生との関係をこじらせた。風邪ならすぐに治るのに。だけどこの信頼関係はいつか元通りになるはず。時間はかかるかも知れないけど、僕らの関係は絶対にまたよいかたちになるよ。今まで通りじゃなくていい。今までよりもっと強い信頼関係ができる。医師と患者として、人間同士として、より理想的な関係になれると信じている。きっとやり直せるよ。


午前4時。頭とこめかみと耳が痒くて起きる。掃除をしました。発狂した夜でも許してくれないのですね。明日は髪を切りに行きたいのに…こんなときでも先生を頼っては駄目なの?ひとりでつらすぎて死にたくなる。自分が惨めで可哀想だ。