妄想と記憶

人生にくじける孤独な妄想と記憶

二度寝して少し遅れたけれど街に出かける。家にいると息がつまりそうなんだ。本当は外に出る気力なんてないのだけど、無理をしてでも家にいるのが嫌だったのだ。寝ている間に掻いた形跡が小さくなくて、朝の準備に時間がかかった気がする。寝られるだけましだと簡単に開き直るのは難しい。眠い…質が悪かったのだろう。掻いた記憶はまったくないのだが。どうせ死ぬのだからと自分に言い聞かせている。死ぬまで現実から逃げていたい。苦しいから逃げるんだ。逃げることは必ずしも悪いことじゃない。


いつものカフェに来てます。クロワッサンが直前で売り切れてしまった。いつもと違う。僕が悪い。僕のせいだ。人が怖い。いつもと違うと不安だ。居心地が悪い。無理して外に出ても余計に気が滅入る。家にいるよりはましというだけでしかない。本当にましなのかすら疑わしい。はぁ…溜め息も出ない。ひとりはつまらない。つまらない。つまらない。つまらない。他人の笑い声がする。うるさい。もう自分の居場所なんてないような気がしている。そんなものは最初からなかった。僕はどこにいることも許されない。先生。先生は、先生は…僕は逃げるよ。苦しいことから逃げるんだ。もう嫌なんだ。耐えられない。疲れたんだ…


ジャガイモの入ったパンとクリームパンとラテで寂しいひとりランチ。いつ以来か分からないくらい久しぶりにクリームパンを食べた。昔は好きだったから。だけどあまりおいしいと感じなかった。こんな精神状態では何を食べてもおいしくないか。食後にいつものレキソタンと一緒にデパスを2錠飲んだ。薬には頼らないつもりだったけど、薬を飲めば現実から逃げられるような気がしたんだ。薬は先生が処方してくれたものだから、薬に頼ることは先生に頼るのと似たようなものだという解釈は飛躍し過ぎているだろうか。
気持ちが落ち着いたのか、思わず新しい店員さんに話しかけてしまった。しかも気遣うような言葉を口にした。自然に出た言葉。本当は誰とも話したくない気分のはずなのに。何故?お人好し。いや傷付くのが怖いんだ。嫌われたくないだけ。本当の自分が分からなくなっている。本当の自分なんてもの自体存在するのかどうかも怪しい。
やはり甘いものはもうやめようと思う。アトピーに悪いとかそういうのでなく、先生とお揃いだから。先生はストイックに甘いものを避けて間食しないようにしている。だから僕も先生と同じようにして先生とお揃いになりたい。僕は先生とお揃いになりたいだけなんだ。最近見ているエヴァだって、先生の好きなものを僕も好きでいたいからという気持ちが強い。もちろんエヴァという作品が僕に合う僕が楽しめるものだったというのが一番大きい。先生に薦められた他のアニメは見る気になれなかった。
先生とお揃いの道で生きていきたいという気持ちはどのくらい本気なのか。先生と同じ場所で生きていきたい。僕は本当にこの第二の道に進みたいのだろうか。できるかどうかは関係ない。やりたいかどうかだ。相当な覚悟を持ってリスクを背負ってまでやりたいことであるならば、それは僕にとって正しい道であると言えるはず。僕にしかできない、僕だからこそできること。今何をすべきか。後悔だけは絶対にしたくない。


カフェ→ドトール。アメリカンで先生とお揃いの気分に浸る。家に帰りづらいので当てもなく街をさまよう。父親と二人で家にいると息苦しくて不快なんだ。父親が苦手なのは先生とお揃い。母親なら大丈夫なんだけど今日は帰りが遅い。しかし夕方になれば雨が降るかも知れない。それも嫌なので帰るタイミングを計りかねている。ようやく自分の道に専念する覚悟が出てきたような気がしている。現実から逃げるためでなく、むしろ現実に向き合うため。つまりこれから生きていくため。自分らしく。このために自分は生まれてきたのだと思えるような生き方をしたい。
気持ちが少し上がってきている。新しい店員さんと言葉を交わしたせいだろうか。がんばっているひとを見ると応援したくなる。そのひとはまだ慣れてなくて緊張すると言っていた。僕は仕事ができない。ちゃんと教えてもらえればそれなりにできるはずなのだが。上司に恵まれなかったせいか。職場環境が悪かったせいか。それとも単に僕の能力が劣っているせいか。仕事をする自信をなくした。組織の中で仕事をすることは向いていない。健康な普通の人間と同じことを求められる。病気持ちの僕には過酷な状況だった。組織の中に僕の居場所はなかったのだ。ドトールの椅子に座っているのがきつくなってきた。外に出て歩こうか。


結局行く所なんてどこにもない。雨が降らないうちに帰るか。気持ちが少し上がっただけでも、外に出た意味はあった。新しい店員さんのがんばっている姿に刺激を受けたのだろうか。外は生暖かくてより一層の眠気を誘います。脳と体が分離しているような、起きているのか眠っているのか曖昧な感じ。気持ちは上がれば落ちる。帰ったら何しようか。先生と遊びたいというかお話したい。何を話そうか。何でもいい。僕はどうしたらいい?どうしたいのか?分からない。


何かをしなければ何も変わらない。このまま終わる訳にはいかない。自分次第。またひとつ乗り越えなければならない。先に進むために。


ヒゲを短くした。やはり時間がかかり過ぎる。今回もだいぶ伸びていたからな。早めに切らないと駄目だね。ハサミでヒゲを切っている。不便だ。病気だから仕方ないか。僕にとっては普通のこと。僕のなかでは僕は普通なんだ。僕の基準から見れば、僕はまったく普通の人間ということになる。病気持ちであることも普通なんだ。生きるのが苦しいのも普通のこと。僕は普通だよね?


現在午前3時14分。顔を掻いて起きた。起きたときに携帯の時計は2時半を表示していた。0時半頃寝たから二時間経っている。完全に眠りに落ちていた。左の頬から汁が出ている感覚があったのがきっかけで起き上がった。こめかみ付近とおでこを掻いた形跡が残っている。記憶は一切ない。頭はほぼ無事だった。
今日はせっけんで顔を洗って、あえて化粧水はつけなかった。特に乾燥していなかったし、化粧水で保湿をする意味があるのか確かめたかった。ただ左側のこめかみの辺りともみあげの所が少し皮がめくれていた。痒みはなかった。事実としてその辺りを中心に掻いてしまったようだ。しかし保湿をしていたとしてもおそらく同じ結果になっていただろう。皮がめくれている所に化粧水をつけても無意味だと知っているから。被害は軽いが精神的な苦痛は重い。一時的に胃が痛くなった。泣きたい気持ち。もうどうしたらよいのか分からない。そろそろ諦めるときなのかも知れない。